洗練された、素晴らしい映画。アイテムのひとつひとつが引き立ち、
シーンのひとつひとつが印象的。
A Single Man映画を見終わってからこれが、デザイナーであるトム・フォードの初めての監督作で
あったと知りました。途中でキューバ危機のラジオが流れていることでようやく年代が
つかめたくらい、ジョージの家は洗練されていて、古さを感じないことに驚いた。
服の並べ方、アイテムの置き方、すべてが計算しつくされていて美しい、
その上コリン・ファースのこれまた洗練された演技が憂いを醸し出しその相乗効果で
この映画を完璧にしつくしているよ…。恐るべし、新人監督。
この色調は有名になる前のクリストファー・ノーランを
なんとなく思い起こさせた。彼のデビュー作も相当洗練されていたから。
ストーリーはゲイである英国人教授ジョージのとある一日を追っている。
彼は16年も連れ添ったゲイのパートナーをなくしたばかり。
この日をもって彼もその人生に幕を引こうとしている。
大切な人を失って、彼はもう自分が生きていくことに意味がない、と思っている。
だけど、人と人は色んなところで繋がっていて、彼はそれを深く味わうことになる。
ダークな色調のオープニングに比べてだんだんと明るくなっていく彼の世界。
今は悲しみで打ちひしがれている彼だけど、元々はユーモアのある楽しい人なんだな、
というところが後半でちらりほらりとわかってくる。
この日一日で、彼は何人の人のことを考えただろう…。家政婦、受付のお姉ちゃん、近所の子どもetc
私が一日でこんなに沢山の人のことを考えたこと、あるかな、と思っちゃった。
目を凝らしてみれば、きっと色々なものや人が私達に毎日関わっているわけで、
普段は忙しさにかまけて、そして当たり前なことにかまけて気付かないだけなんだよね。
ジムとの出会いを思い返すシーンや、同じ種類の犬にキスするジョージの姿が切なかった。
こんな繊細な演技を出来る人はやっぱりコリン・ファースくらいしか今考えられないかも。
アメリカにいるブリティッシュという設定もまた面白い。彼の英語はコテコテのブリティッシュではなく、
アメリカ英語と面白い具合にミックスされていたのも興味深い。
ラストのフクロウ、私はあれを見たとき迎えがきたのか、それとも自由になっていいよ、と
言いに来たジムだったのか、と思ったんだけど、まさかそう来るとは…。
posted by minori at 20:49| 宮城 ☁|
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映画「さ」行
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